紙の船

出かけようかと思ったら、遠くで雷が鳴り出した。

今日は辞めておこうかな、出かけるの。

明日には東京はまた、緊急事態宣言下におかれるわけですが。

この土日、まぁまぁ天気が良かったけれど、一歩も外に出ていない。

 

父方の祖母は、ちょっと変わった人だった。

あれは今でいう解離性同一性障害だったのかも知れない。

私が13歳の時に亡くなった。

私が物心ついた頃には、祖母はすっかりおばあさんだったが、それでも時々孫相手に子供のような事をいうような人だった。

シャンとしている時もあれば、少女のように無邪気だったり、ぼんやりとして耳の遠いただのおばあさんだったりした。

子供ながらに困惑していたが、祖母はそんな人だと思っていた。

見たことは無かったが、過去に尋常じゃない暴れ方をして、それを全く覚えていなかったという出来事があったらしく、それをみた人達は「狐憑き」だと言ったりしていた。

背中に蛇が居て悪さをすると言って泣いたりしていたが、それも日常だったのでそんなものかと思っていた。

その祖母がたった一つ、いつも折っていた折り紙があった。

船の折り紙だったけれど、祖母以外でその折り方をする人を見たことが無かった。

最近になって、外国のゲームなんかやっていると、時々その船が描かれている事に気がついた。

調べてみると、西欧で折られている折り紙のようだった。

 

祖母は若い頃、満州にいる親戚を頼って渡っていった。

女友達と二人で渡ったというので、その頃は女性でも気楽に行けたのかもしれない。

そこで祖父と結婚して、敗戦後は命からがら逃げ帰ってきたのだけれど。

 

大陸は当時いろんな国の人々が流れ込んでいたので、祖母はそこで船の折り方を覚えたのかもしれない。

私も鶴の折り方は忘れても、祖母から教わった船の折り方を忘れることはない。

 

これを書いている間に、雷は近くに来て大雨を降らせて通りすぎていった。

 

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紙の船