永いお別れ

人生には思わぬ事が起こる。

この二週間が十年のようでもあり、昨日の事のようでもある。

 

二週間前に、親しい人を亡くした。

知り合ったのは昨年の十月で、仕事絡みで知り合った。

気があったというか気に入られたというかで、その後よく電話が来るようになった。

話していると楽しいし、波長が合う人だった。

でも、ちょっとモラハラな感じのところがあって、お付き合いするつもりは無かった。

それでも毎日のように電話が来て、私の毎日には彼の電話が当たり前になってしまった。

毎日話したいと思うようになって、結局はお付き合いになった。

しかし彼には、抱えているいろんなものがあった。

物理的なもの、心理的なもの。

それをどうにかしてあげられる力は、私にはなかった。

いろんなハードルがあって、それを少しずつ越えていこうと思っていた。

まだ時間は、たくさんあるだろうと思っていた。

 

でも時間は無かったのだ。

きっと最初から無かったのだ。

私と彼が出会ったのは、別れに向かう為の準備だったのだ。

 

二週間前の夜、警察から電話が来た。

この名前の方ご存知ですか?ご家族の連絡先お分かりになりますか?

 

何か悪いことがあった事はすぐ分かった。

事件ではないんですけどね、詳しくはお教え出来ないのですが。

 

亡くなったということですか?

まぁ・・・そうですね。事件性はないです。自死でもないです。

ご親族と連絡がとれなくて。あなたの連絡先が残っていたので。

 

私は彼の家族とは会ったことも無かったが、たまたま連絡先を探せるものを預かっていた。

そこから彼の実家の連絡先を教えた。

私は親族ではないので、会いに行くことすら出来なかった。

 

その後、彼の勤務先を通して親族と連絡を取り、最後に彼の顔を見ることが出来た。

 

いろんな事に悔いが残った。

あの時どうして、あんな事を言ったのだろう。

あの時どうして、こうしてあげなかったのだろう。

追い詰める事を言ってしまったな。

あの日、部屋に行ってあげれば良かったな。

前日の夜まで、メールしてたのにな。

もう一度会いたかったな。

 

私はどうして彼と出会ったのだろう。

この日を回避するためではなく、彼の最後を見届ける為の出会いだったんだろうか。

泣いても泣いても戻る事はないから、もうなるべく泣かないようにしよう。

私はずっとひとりだったから、これからもひとりで大丈夫。

でも、時々は泣くよ。

もうつまらない話を、聴いてくれる人は居なくなる。

話したいなぁと思って、きっと泣くよ。

 

次に会う時まで、永いお別れ。

今度会ったら、話すことがたくさんあるよ。