雨か。
今年の夏はずっと雨だった。
雨じゃない日は、高音と湿気で出掛けるのもうんざりだった。
入道雲が出て、いかにもな夏は、今後自分には訪れない気がする。
いやいや毎年夏は訪れて、青空に入道雲は出て、朝顔が蔦を這わせて、風鈴が静かに鳴る、そんな夏は来るのだ。
だけど、私にはそれを感じる感受性が無くなった気がする。
例えば10年前の夏は、まだ夏を夏と感じていた。
昨年でさえ、夏は夏だった気がする。
しかし、今年のどんよりとした夏を境に、私はなんだか夏を失う気がする。
夏は当然来るんだけど、自分はそこに参加しないような、書割の舞台を観ているような、そんな感じ。